読書⑧ 「コンビニ人間」 村田紗耶香著

2016年芥川賞受賞作。

社会不適合者(あちら側の人間)古倉恵子。18歳から18年間コンビニ店員のアルバイトをしている。子供の頃、死んでいる鳥を見て「焼き鳥にしよう」と母親に言う思考回路の持ち主。

コンビニのマニュアルに従う事とアルバイト仲間の真似をして「普通」を演じている。

 

私はこの主人公を精神的な障害者とは思わない。ちょっとグレーっぽいかな…という程度。働いていればそういった人とは山ほど出会う。(物語後半に出てくる白羽の方がよっぽど近づきたくない。)

古倉は自分が人と違うことを自覚している。それを直す為に普通の人を観察し、真似をして「普通」に見えるように努力をしている。この点は共感できる。

 

この物語は昨今流行っている「多様性」と昔からある「ムラ社会」は相いれるのかを考えさせられる。

あちら側(少数派)の人間とこちら側(多数派)の人間。胸糞悪い白羽の「ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはムラから追放されるんだ」という一言は「確かに」と思ってしまった。

「多様性」と言いながらも、多数派が「正社員・結婚・出産」という流れを「普通」とした場合、その流れに乗らないものは「異物」と嫌厭される。少数派は根掘り葉掘り不躾なことを聞かれ、結局多数派には納得?理解?できない理由のため異物のままとなる。(※物語上での例えです。)

 

今は少数派に属する自覚があるなら、それなりの覚悟と無関心を心がけるしかないかな。相互理解や納得よりも、考え方を受け入れた上での互いの距離感が大切だと思う。

この物語の救いは「自分の生きやすい場所を見つけて、そこで生きればいい」と言ってくれている所。